2009年11月21日土曜日

イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか


渡辺一夫著 築地書館
2009年10月発行 本体2000円

日本に生育する木のうち36種類の生態・成長や繁殖の様式などの特徴を紹介している本です。「イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか」というタイトルがついていますが、イタヤカエデは25番目に出てくるだけで、特にイタヤカエデについて注目すべき記載があるというわけではありません。さおだけ屋はなぜ潰れないのか?という新書がヒットして以来、似たようなタイトルの本が多く見られるようになりましたが、本書もきっとその一つでしょう。目を惹くためとは言え、はしたないという印象を与えるタイトルです。

36種の木の中には高山に行かなければ見られないものもありますが、東京で街路樹や公園などで身近に見られる木も取りあげられています。また紹介されている特徴も面白く読めました。

例えば、森林の下生えに笹が生えている所って、どうやって樹木の更新が行われるのか疑問だったのですが、笹が枯れた時に稚樹が育つと説明されていました。そういえば、笹は実を結ぶと枯れるんでしたね。

ドングリを付ける木もいくつかとりあげられています。ドングリは乾燥に弱く、土の中での生存期間も一年程度と短く、ネズミなんかに食べられやすくもあってコストの割に欠点が多い種子なのだそうです。固い殻があっても乾燥には弱いとは知りませんでしたが、デンプンの存在の仕方が穀物や豆類とは違うのでしょうか。また、それならどうしてああいう大きなデンプンのたくさん詰まった種子を作るのかが不思議に感じます。ただ、ドングリを作る木が絶滅していない点からは必ずしも、種子としてドングリをつくる戦略が失敗というわけではないようです。

本書は樹形や葉や幹や花や実をたくさんの写真で紹介しています。ただ、カバーを除くとそれらすべてがモノクロ写真なのです。もう数百円高くても良いから、カラー印刷で出して欲しい気がする本でした。

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