雨倉孝之著 光人社
2009年2月発行 本体1800円
日本海軍の対潜水艦戦の歴史を扱った本です。第一次大戦で地中海に派遣された駆逐艦隊から説き始め、戦間期、そして太平洋戦争での破局に至るまで、とても分かりやすく解説されています。日本海軍は艦隊決戦主義に凝り固まっていて、海上通商保護についてはまったく等閑視していたものと思ってしまいます。確かに、財政的な問題もあって、実際には大した施策は実施されず、多くの海軍軍人が通商保護については無視していたのは確かです。しかし本書を読むと、第一次大戦中の経験や戦間期においても、海上通商保護の重要性を認識して、その強化を訴える海軍軍人(将官にも)がいたことがよく分かりました。
また太平洋戦争中、護衛艦の艦長や幹部の多くは兵学校出の海軍将校ではなくて、海軍予備員だった予備将校が任じられました。予備役の海軍将校と、本来は商船に乗り組んで仕事をしている海軍予備員とは全く違うものでした。イギリスに倣って明治時代に設けられた海軍予備員制度ですが、太平洋戦争の開戦まで、定期的な教育などのまともな能力向上の施策が行われていませんでした。こういったことも本書には分かりやすく説明されています。
太平洋戦争開始後、しばらくしてから商船・船員の被害が増え始めるわけですが、そのあたりを読んでいると、もっと早く降伏できなかったのかと感じてしまいます。まあ、特攻や大和の沖縄行きまでさせてしまう人が指導していた国だから無理なのは分かりますが。
クルマにはねられて脳挫傷になり、しばらく入院していました。退院後もいくつか症状が残っているのと、気力・根気の面で硬い本を手に取る気にならない状態なのですが、それでも比較的、気軽に読める本でした。大井篤さんの海上護衛戦を読む際の基礎知識も得られるので、おすすめです。
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