2011年4月15日金曜日

あっと驚く船のリサイクル

大内建二著 光人社NF文庫
2011年4月発行 本体686円
タイトルにはリサイクルと記されていますが、内容はリサイクルに限らず、どちらかというとリユースされた艦船つまり中古の船に関するあれこれの方がたくさん紹介されていました。例えば、中東鉄道買収の見返りにソ連向けとして建造されたはずが日本海軍や海上保安庁で使われ後に南極観測船にもなった宗谷や、第二次大戦後にアメリカからアルゼンチンに譲渡されフォークランド紛争で沈んだ巡洋艦ヘネラル・ベルグラーノなどの有名な艦船のエピソードや、また、新しい海運会社は安く入手できる中古船で創業することが多いこと、アメリカで第二次大戦中に大量に建造されたリバティー船が大河の帯水地帯に保管されたのは淡水でサビ対策のため、などなど興味深く読みました。
客船、貨客船、貨物船あるいはタンカーにおいても、商船の設計では船体のスタイルや船内の一般配置においても、日本独自の姿が完全に確立していった。例えば外型(まま)においてはヨーロッパ、特に西ヨーロッパや北ヨーロッパの貨物船に見られる分離船橋型スタイルは日本では育たず、また乗組員の構成においても日本では独自の役割分担が確立され、これにともない船内の配置(乗組員居住設備)も欧米とは違った日本独自の配置が確立されていったのである。その一方で、日本の貨物船やタンカーが中古船として購入される場合には、パナマやギリシアなど特定の国の購入に集中し、西欧諸国やアメリカに購入される例は極端に少なくなる。
日本独自のスタイルの確立とともに、海外から中古船を購入しても改装が必要になってきたので、戦後の一時期を除くと外国の中古船を受け入れがたい状況になったこと、アメリカから払い下げられたリバティー船を多数購入したギリシアのような国もある一方、日本は中古のリバティー船を一隻も買わなかったこと、日本の商船は品質・保守・点検・整備・清掃などの点から中古船としても人気が高いこと、などなど全く知らなかったので勉強になりました。
船の解体という非生産的作業にドックを使うことは決して得策ではない。船が数万総トン級と大型になればドックで行われる場合は確かに多くなる。しかし解体に要する四~五ヶ月間の間ドックは解体船に占領され、新しい船を造る際に必要なドック作業は中断せざるを得ない。造船所での船の解体は決して望まれるものではないのである。
この本を読むまで、なんとなく艦船の解体はドックに入れて行うものかと思っていましたが、そうではないんですね。帆船の時代から、浜に乗り上げて解体する方法があり、また海に浮かべたまま上構から解体を始めても、部材が撤去されるにつれ船体も軽くなり、水線下だった部分も解体できるようになり、最後に残ったキール周辺の部分だけを陸上に引き揚げて解体することもできるのだそうです。船の解体は人件費の問題で先進国では行われず、現在では中国とインドやバングラデシュで行われることがほとんどになっています。インドやバングラデシュでは特別な施設もない干満の差が大きな砂浜海岸に乗り上げて解体していて、労働災害が多いこと、アスベストや燃料油残渣などの廃棄物が海にそのまま投棄されることが問題なのだとか。船の解体も廃棄物輸出と同じような問題を抱えているわけですね。

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