2009年2月7日土曜日
エトルリア人
ドミニク・ブリケル著 白水社文庫クセジュ932
2009年2月発行 本体1050円
なんとなく謎の民族という印象が強いエトルリア人。実際のところはどうだったのか全く知識がなかったので、2005年と比較的新しく出版されたこれを読んでみました。勉強になった部分をいくつか紹介します。
イタリアのトスカーナ地方に広がっていたヴィッラノーヴァ文化を担った人たちが、都市国家を形成するようになったのがエトルリア人だということのようです。エトルリア人の起源については古代から、イタリア土着民説、小アジアなどオリエントからの移住説がありました。ただ、これらの説が唱えられたのには訳があって、例えばイタリア土着民説にはシチリア島のギリシア植民市の人たちがエトルリア人をギリシア人とは違うバルバロイだとする政治的な目的があったのだそうです。また、フランス人の出自をケルト人・ローマ人・ゲルマン人のどれか一つに求められないのと同様に、エトルリア人も土着の要素に加えて外来の複数の文化の影響があったと考えるべきというのが著者の主張です。
エトルリア人が謎の民族という印象を与えるのは、その言語が解明されていないという点が大きいようです。エトルリアがローマに征服され、ローマが帝政になる頃にはエトルリア語は使われなくなってしまいました。しかし、エトルリア語で記された碑文は多く残され、また偶然残ることになった文書の一部なども伝えられています。文字自体はギリシア文字とほぼ同一なので、読み方や発音も分かっています。また、さまざまな学者の工夫・解釈によって少数の単語の意味や語法は判明しましたが、多くの語や文は意味が読み取れないのだそうです。エトルリア語は、ヨーロッパを席捲したインドヨーロッパ語族には属していないことが解読困難なことの一因で、またこれはエトルリア人の起源が問題とされる由縁でもあるのですね。
この本で扱われる年号のほとんどが紀元前XX年です。なのでこの本では、特記のない限り年の数字の前につける「紀元前」という表現がすべて省略されています。「紀元前」を省略することにより、数ページの節約になり合理的なのだと思いますが、こういう表示の仕方の本はこれまでに出会ったことがありません。フランスでは一般的な表現法なのでしょうか、珍しいですね。あと、この本は1050円なのですが、税込み1050円ではなくて本体が1050円なのです。一見、税込みの価格のような1050円を本体価格にするとは、白水社の人も変わってるような。
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