2009年6月12日金曜日

私にとっての20世紀


加藤周一著 岩波現代文庫S180
2009年2月発行 本体1000円

昨年12月の死去を期に出版された本かなと思います。発売当時買ったけど何となく積ん読になっていたのを、読んでみました。日中戦争の頃から昨今の日本のこと、戦争に対する彼の主張、社会主義のこと、日本文学史関連のお話などが載せられています。基本的に彼の主張にはうなづいてしまう私なので、300ページあまりの本書のうちの250ページほどをしめる第一部は、予定調和的な読書になってしまいました。

「加藤周一、最後のメッセージ」と題した第二部には、2006年12月に東大駒場キャンパスで行われた「老人と学生の未来」という講演が載せられています。
こういう講演会に来てくださる方はたいてい老人なんですよ。老人はみんなよぼよぼしているとは限らないので、比較的元気のいい老人が集まるわけなんです。しかし、若い人は少ないんです。

若い人たちは、個人的な試験の話とかうまいもの食べたいとかで、それ以上先まで見えないのかというとそんなことはないと思います。というのは、六〇年代の後半、1968年に象徴的ですが、その世代の学生さんたちは、大きな社会問題に非常に激しく反応し、それを行動で表した。

と語っています。そして、職についている世代が集団の圧力で思っていることも黙って過ごさざるを得ないのに対して、老人と学生は自由が最大に高まる年代だから、共闘して九条改憲の計画を挫折させようと説いています。

この講演で主題である九条を守ることとは別に、上記の世代の話には興味を引かれます。というのも、1960年代に社会問題に激しく反応した学生たちと、最近の彼の講演会に集まってくる比較的元気のいい老人たちというのは、きっと同じコホート、つまり団塊の世代なのだろうと思うのです。彼は、世代間の違いが共通経験の違い、特に戦争経験の有無で分かれるように話していますが、このコホートは直接の戦争経験を持たない人たちです。では、このコホートの特殊性がどこから生じているのか、彼の見解を生きているうちに尋ねてみたかった気がします。

0 件のコメント: