2010年8月29日日曜日

次男坊たちの江戸時代



松田敬之著 吉川弘文館歴史文化ライブラリー246
2008年1月発行 本体1800円
iPhoneやガラケーの影響で現在はほとんど売れなくなっている週刊誌という存在がありますが、一昔前ならその種の週刊誌に載せられていたようなゴシップ、それも江戸時代の公家の話が多数載せられている本でした。その対象も、武士であれば厄介・部屋住みと呼ばれた次男三男だけでなく、養子、密子、猶子や廃嫡、復籍など広い範囲の話題が取りあげられています。読んでて面白いし、またこれだけのゴシップを集めるのは大変だったろうなと著者の博捜ぶりに敬服します。本書は、同じ吉川弘文館から出版された「朝廷をとりまく人々」に著者が寄せた「堂上公家の部屋住」という論考から発展したものだそうです。ただ、概説的な部分は似ていますが、個々のエピソードはほとんど別のものでした。「朝廷をとりまく人々」も面白い本でしたから、両方おすすめです。
紹介されているエピソードには、公家ならではという点もあります。例えば、猶子なんかはそうでしょう。しかし、身分違いの養子や廃嫡などに関しては、おそらく江戸時代の武士や農民にもおなじような話がたくさんあったのかなと想像します。しかし、うちうちに密子や元密子だった兄弟の喪に服する際に武家伝輳に届けをするなど、記録が残りやすかった点は公家ならではなのでしょう。

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