2008年3月3日月曜日

西洋と朝鮮

姜在彦著 朝日選書839
本体1200円 2008年2月発行

マテオ・リッチらによる漢訳西洋書を17世紀に輸入したことから始まった朝鮮の西洋との交渉。神の命と主君・父の命は異なる際には神の命を尊重しなければならないというキリスト教の教えが、儒教の忠孝に反する異端邪教だということで禁止されました。

しかも、数学・天文学などの西洋の学術(西学)とキリスト教(西教)を別物として扱おうとする人たちの力が弱く、西学研究も憚られる状況が続きました。また、朝鮮は西洋諸国と国交・貿易ともに行うことがありませんでした。これは、清や日本とも異なる点です。

同じ著者の「朝鮮儒教の二千年」朝日選書668を読んだ記憶では、朝鮮における儒教は、高麗から朝鮮への易姓革命の際に、高麗時代に強かった仏教からの影響を避ける目的で儒教立国を目指したものだったという風に理解していました。しかし、その後の経過を見ると建国に利用したはずの儒教に子孫達が呪縛されてしまったということなのでしょうね。日本が、明治維新に利用したはずの「国体論」で惨めな敗戦にまで至ったことを想起させられます。

私がこの本を読もうと思ったのは、ウエスタン・インパクトに対する対応が日本とどう違っていたのかに興味があったからです。著者も同様の興味をお持ちだと書かれていました。

日本の場合は、徳川吉宗の功績がやはり大きかったと著者と同様に私も思います。祖法だった洋書の禁を解くには、やはり将軍の決断が必要だったでしょうから。彼は紅葉山文庫の本をよく借り出して読んでいた教養人ですから、そういう政策を取ることが出来たのでしょう。

その後の日本は蘭癖と呼ばれるような大名が出現したり、幕府の公的機関として蛮書和解御用掛・蛮書調所が設立されたりするほど、西洋に対する関心・研究が盛んになり、これが近代以降の日本と朝鮮の進路を分ける一因になったのは確かでしょう。

内容とは関係ないのですが、最近の朝日選書のカバーは派手です。

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