2008年10月20日月曜日
帝国陸海軍の基礎知識
熊谷直著 光人社NF文庫522
2007年2月発行 税込み743円
実際に戦われた戦争・戦闘のあれこれについてではなく、日本軍の階級、給与、軍装、教育制度、経理や医事衛生部門などに関する事項が解説してある本です。どこかで読み知っていたことも多かったのですが、ほうそうだったのねと感じるエピソードもちらほら。
例えば、外征の軍は内地の軍とちがって、徴兵や動員など、国民に関する軍事行政の責任はもっていなかったという点について。沖縄防衛のために置かれた第32軍は外征軍ではなかったのですが、防衛戦を行う特別の軍と言うことで、やはり軍事行政の責任はもっていませんでした。沖縄の軍事行政の責任は、あいかわらず福岡の西部軍司令官にあり、実務はその下の沖縄聯隊区司令官(大佐)が、県庁、市町村役場などの行政機関と連絡をとりながら、行っていたそうです。ですから、中学生が鉄血勤皇隊員とよばれた少年兵に動員されたり、、女学生がひめゆり部隊などとして動員されたのは、聯隊区司令官が軍事行政として行ったろうということです。実戦部隊と軍事行政の責任者が異なることによってトラブルが生じたかどうかまでは書かれていないのですが、軍隊も官僚組織だと言うことがよく分かるエピソードです。
また、海軍兵学校出身の加藤友三郎が1922年に内閣総理大臣になって以来、敗戦までに陸士・海兵出身の首相が各5名ずつで、その他は8人だったそうです。その他8名の中で帝国大学法科出身は京都の近衞文麿をあわせても5名しかいない訳ですから、軍人出身首相の多さを再認識させられます。帝大卒業生に対して旧制高校が与えた影響(考え方やその後の友人など)と似たものを、陸士・海兵での教育・生活も軍人にもたらしたでしょうから、陸士・海兵が第一次大戦後の日本の進路に与えた影響はかなりのものと言えそう。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿