2008年10月12日日曜日

リーディングス戦後日本の格差と不平等 第2巻広がる中流意識


原純輔編 日本図書センター
2008年3月発行 本体4800円

行動経済成長の影響、そして学歴・貧困・政治意識などをテーマとして、1971年から1985年頃に書かれた社会学の論文を27本集めた本です。社会学の論文はデータや図表が多いせいか、また単行本として出版されることが多いためなのでしょう、この本には一部を収録されているものが多くなっています。

あの頃、一億総中流時代といわれていたのを想い出します。新中間階層・新中間大衆の出現を唱える論者と否定する論者の間で中流論争がなされましたが、今から振り返ってみると「中流」は幻想だったのかなと感じてしまいます。ただ、実際には階層間の格差がありながら、90%以上の人たちが自分を「中」であると感じていられたということは、とても幸せな時代だったことは間違いありません。

この年代は私が子供から大人になった頃で、自分も日本も豊かになりつつあるということを実感できた時代でした。ただ、そんな頃でも、格差・貧困の存在をきちんと論じていた人たちがいたことも収録された論文から、よく分かりました。

27本の中にはマルクス主義的な視点・用語で書かれた論文もいくつかあります。たとえば山田盛太郎の本とか、むかしはそういった表現を当然と思って読んでいたものです。でも、いまそういった言葉遣いの論文を読むと、内容は別にしても、やはり時代を感じるばかりです。

また、私が歴史や社会科学の本を好んで読むようになったのはこの時代です。私にとっては全くの過去の事態として日本の敗戦があり、なぜ戦争するようになったのかが問題関心の一つとしてあったのです。で、この頃から現在までの年数と、この頃と戦争の頃の間の年数とが、同じくらいになってきてるんですね。自分の生きていた頃が歴史になりつつあるというのも不思議な感じでした。

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