定額給付金の財源を確保するための財源特例法案が衆議院で再可決されました。いよいよ実施が決まったわけですが、この施策は昨年夏に定額減税として提起された時からうさんくさい感じでした。なんといってもかつての地域振興券を想い出させますから。でも減税ということなら、まあ了解できる範囲かなとも思っていました。それが、いつのまにか「定額減税は『給付金』方式とし、全世帯を対象に実施。規模は約2兆円。標準的な夫婦子ども2人の4人世帯で給付額が6万円程度になる」とのこと。町中にたくさん貼られているこのポスターの政策キャッチコピーのトップには今でも「定額減税の実施で家計を守る」と書かれていますが、どういうつもりなのかしらん。
また、この定額給付金のうさんくささをさらに増幅させたのは麻生首相の一連の発言です。高額所得者は受け取りを辞退すべきで「矜持の問題」などと言ったり、支給に所得制限を設けるかどうかは地方自治体の判断に任せると言ったりなどなど。まあ、定額給付金という施策がもっとも役立ったのは、麻生首相の政治家としての資質を明らかにしてくれた点なのかも知れません。
世論調査でも、マスコミの論調でも、野党だけでなく自民党の議員にまでも大不評の定額給付金ですが、それにも関わらず実現にまでこぎつけたのは、ひとえに連立パートナーの公明党に対するおもてなしが理由なのでしょう。でも、公明党はどうしてこんなに評判の悪い政策を実現させたがるのか、とても不思議です。
そこで想い出すのが昨年から市内に貼り出されている公明党のポスター。高齢者の旅行補助金制度を創設したと誇らしげです。私なんかはこのポスターを一目見て、こんな子供だましのばらまきの制度で喜ぶ人なんかほとんどいなかろうと感じてしまいました。こんなことに費やす税金があるのなら、介護の充実などに使ってほしいと感じる人の方が一般的なのではないでしょうか。このポスターは、ばらまきの愚策の宣伝をして、公明党に対する評判を悪くするだけなんじゃないかと心配にもなるくらいです。でもでも、きっと公明党を支持している人たちは、この「公明党が実現しました!」を高く評価するのでしょうね。だからこそ、ポスターにまでして愚策を進めたことを公開するのでしょうから。
そう考えると、定額給付金についても同じ構図の存在が推測できます。どれだけ世間で評判の悪い愚策だとしても、「公明党が実現しました!」ということで支持者はさらに支持を固くしてくれる。たとえ新たな層に支持を拡げることができなくとも、これまでの支持者だけを手堅くまとめる内向きの戦略と考えれば納得できます。
でも、そうは言っても総額2兆円にもおよぶ定額給付金。個人消費を増やすために使うというのなら、私の希望としては介護の分野に支出して欲しかった。21世紀世界大恐慌の影響によって失業者が増加する一方で、介護・福祉の業界では慢性的な人手不足が続いていて。その緩和のためにもインドネシアやフィリピンから外国人介護労働者の受け入れが始まります。外国人労働者の受け入れについては論点がいろいろあるのでおいとくにしても、失業者と人手不足の共存はどう考えても変。で、この問題を解決するには介護労働者の給与の低さの是正がぜひとも必要です。厚生労働省が来年度に行う3パーセント程度の介護給付費の引き上げ改定では全く焼け石に水。でも、日本全国の一年間の介護保険給付費の総額は5兆円程度ですから、今回の2兆円を投入すれば給与水準ははっきり上昇してミスマッチはかなり改善するに違いありません。まあ、一年ぽっきりのばらまきと違って、こういった制度的な改善には連年の2兆円支出が必要になってしまうので、与党にはとりあげてもらえないのでしょうが。
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