2010年7月7日水曜日

フォークの歯はなぜ四本になったか



ヘンリー・ペトロスキー著 平凡社ライブラリー693
2010年1月発行 本体1700円
このタイトルはむかし見た記憶があります。1995年に平凡社から出版されていたそうで、今回はライブラリーとして復刊したものだそうです。
「フォークの歯はなぜ四本になったか」というタイトルを見て、いろいろなモノがどうしてそういう形態をしているのかをいくつも解説している本なのかと感じていました。たしかにそういう面もあるのですが、ちょっと違う印象。原著のタイトルはThe Evolution of Useful Thingsで、本書のサブタイトル「実用品の進化論」をそのままタイトルにすべきで、「フォークの歯はなぜ四本になったか」と名付けたのは奇をてらって売り上げを伸ばそうとしたのでしょうが、とても誤解を招きやすく良くないやりかただと思います。
東アジアのノコギリは引いて切るのに対して、欧米のノコギリは押して切るといった違いがあることから分かるように、 form follows function(形態は機能に従う)という俗説は誤りだと著者は述べています。ではどうしある機能を果たすためのモノの形態が変化していくのかというと、既存のモノの使いにくさを何とかしたいと感じる人たちがいます。その人たちの中で能力のある人は実際にその欠点を取り除いて使いやすくすることを意図して新しいデザインを作り出すからというのが著者の主張です。長い歴史のあるモノでも、現在あるカタチが最良とは言えないわけです。
それに加えて、時代があたらしくなるほど、マーケティングのための差異化が意図されたりもしています。そんなことが、フォークやクリップやジッパーや缶詰などなどを例に挙げて分かりやすく論じてくれている本でした。

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