ピエール・リグロ著 白水社文庫クセジュ819
1999年9月発行 本体951円
1940年6月に結ばれた独仏の休戦協定には触れられていなかったのに、その後、この地域はフランスから切り離され、ドイツに事実上併合されました。行政官のトップにドイツ人が就任したり、フランス語の使用禁止や地名の変更、男女を問わず若者はドイツへの労働奉仕のための団体に強制的に加入させられるなど、ドイツ化されてゆきました。志願兵が募られ、志願兵の数の少ないことが分かると、徴兵制がしかれました。この地域出身の兵士は、東部戦線に送られて後にソ連の収容所でつらい経験をしたり、フランス国内でドイツ兵として虐殺に参加したとして戦後に裁判にかけられた人もいました。また抵抗運動に参加して処刑された人も多数いたそうです。
ドイツに占領されたフランス内地の人たちには、ドイツに併合され不本意ながらドイツに協力せざるを得なかったアルザス・ロレーヌの人たちの経験・感情は理解されず、この本の書かれた1990年代にいたってもそういう状態が続いたそうです。フランス国内でも、この地域の特殊な経験についての知識・関心が欠如していることが、本書の書かれた理由の一つのようです。しかし日本人の私としては個々の史実の叙述がとても勉強になりました。
普仏戦争後、約50年に渡ってこの地域はドイツ帝国領だったわけですが、ドイツ人意識をもつ人、ドイツ寄りの人はどのくらい出現したのでしょう。そういった人たちは、第一次大戦後のフランス領への変更時にドイツへ移住・帰国してしまったのでしょうか。日本統治下50年のあとに中華民国に復帰した台湾と同じように。
英仏がドイツに宣戦布告した後、1939年9月頃からこの地域の住民のほとんどはフランス南西部に事前の計画に従って避難させられたそうです。マジノ線の外側から内側に避難させた方が安心という感覚があったんですね。
併合後のこの地域の人たちはドイツのやり方に唯々諾々と従ったわけではなく、不服従や積極的なレジスタンスに参加した人たちもいました。ルクセンブルクもこの地域と同じようにドイツに併合され、抵抗活動があったそうなので、それについても知りたいところ。
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