2010年1月3日日曜日

休耕と家畜で地力が維持できるのはなぜ

昨日のエントリーの 土地希少化と勤勉革命の比較史の第七章は「農場」と「小屋」で、エルベ川東側のドイツを扱っていました。この地域で農業を持続して展開するためにはある一定の家畜を保有していることが必要で、そのために人口が増えても農場の分割は行われず、農場数は一定に推移したのだそうです。家畜を保有する目的は地力の維持と大型の車輪つきの鋤をひかせるためでした。鋤はおいといて地力については、
ヨーロッパ農業の基本をなす畑作経営の場合には、土地の消耗がはなはだしいため、「畑作を維持するためには、施肥の改良が絶対に必要であ」り、「この改良に、畑作に牧畜がくりこまれ、家畜の糞が耕地にすきこまれることによって実現した」
と書かれています。中世から前近代のヨーロッパの農業についての本を読むと、この家畜と三圃制・二圃制の組み合わせによる地力の維持について触れられていると思います。

畑で育てた作物を畑から持ち出して、食料として食べたり、手工業の原料として利用します。持ち出された作物に含まれている炭素や水素は、植物が生長する過程で雨や空気中の二酸化炭素という形で供給されます。でも、作物の中の窒素・リン・カリウムなどが簡単には補充できないので地力が問題になります。私には家畜を飼うとなぜこれが解決するのかが以前からとても疑問なのです。

休耕している間に、雷などによって自然に合成された窒素酸化物が雨に含まれて降ったり、畑で育った雑草やマメ科の草を家畜が食べてその糞が肥料になるのでしょうか? 窒素はこんな感じで補給されるかも知れません。また人間の育てる作物よりも雑草の方が土壌からリンやカリウムを吸収する力が強いのでしょうから全く意味がないとは思いませんけれども、ただこれだけでは数十年数百年のあいだには、土壌の中の利用できるリンやカリウムなどの必須元素は使い尽くされてしまうはずです。

採草地でとれた牧草を家畜に食べさせ、畑で排泄させるようにすれば、一時的にはリンやカリウムなどの補給になるでしょう。日本でも山に入って青草を刈り田畑にすきこむ刈敷っていうのがあったと思いますが、ただ単にすきこむより家畜に食べさせて糞の形にしてからすきこむ方が確かに効果はありそうです。でも、これも長い目で見ると、採草地からリンやカリウムなど植物にとっての必須元素が枯渇していって、やがては牧草となるような草も生えなくなってしまうような気がするのです。畑から持ち出した作物を食べた人間の排泄物も肥料としたり、工業原料となる作物の場合には魚肥などをつかったりする日本ではかなりこの問題をクリアーできていたと思うのですが、ヨーロッパの農業がどうして持続できていたのかがとても不思議。また、このことについて触れている経済史の本は読んだことがありません。農業技術史みたいな本にはかいせつされているんでしょうか。

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