2010年1月29日金曜日

蒸気機関車200年史


齋藤晃著 NTT出版
2007年4月発行 本体4200円

炭鉱での揚水用の固定蒸気機関から始まって、トレビシックやスチーブンソンの蒸気機関車など鉄道創設の頃の様子、蒸気機関車のメカの解説、日本や英独仏米の蒸気機関車の歴史などがイラスト入りでとても分かりやすく解説されています。私は特に鉄分が濃い方ではないので、蒸気機関車の動く仕組みや軸配置の進化の理由、各国ごとの事情の違いなど、本書には学ぶ点が多くありました。

むかしMicroProseから発売されたレイルロードタイクーンというゲームがありました。鉄道会社を経営するゲームで、レールを敷いてマップ上の各地に点在する乗客や貨物を運んで利益を上げ、路線を拡大してライバルの鉄道会社に勝つっていう感じのゲームです。主に19世紀のヨーロッパとアメリカが舞台で、年代が進むにつれて、より強力でより高速な蒸気機関車が出現するとともに、スピードの出る旅客輸送向きのものと、最高速度は劣るけれども牽引力の強い貨物用のものを使い分けて利益を上げるようになっていました。で、このゲームでもヨーロッパよりアメリカの方が開始年代が遅いのですが、アメリカのマップに最初に登場する機関車は縦型のボイラーを積んだごく小さなグラスホッパーという機関車なのでした。イギリスではロケット号のように最初期から横置きのボイラーの、今の目から見てそれなりに機関車らしい姿の機関車が使われたのに、なぜ後発のアメリカでグラスホッパーみたいな見慣れない独特な形の機関車が使われたのかとても疑問だったのです。でも、本書を読むと、イギリスと比較して創設期のアメリカの鉄道では路盤や線路がしっかりしていなくて、勾配やカーブが急で、燃料に石炭ではなく木を使うこともあったという事情が解説されていて、小回りのきくグラスホッパーが選択された理由がよく理解できました。

また、日本の鉄道は開設にあたってゲージに3フィート6インチの狭軌を選択しました。本書では、その当時、狭軌の鉄道の経済性の良さなどが注目されていて、ノルウェー・オーストラリア・南アフリカ・ニュージーランドなどでも採用されていたことが、技術的な点も交えて解説されていて、この問題の理解を新たにさせてくれます。さらに、その後の日本の蒸気機関車の歴史については、国産はできるようになったけれども、技術的には保守的で20世紀になってからは目立った進歩がなかったことも記されています。満鉄のパシナ型も決して優れた機関車ではなかったような。まあ、これらについては戦前の日本の技術水準を考えれば仕方がないところでしょうが。

本書の存在を知ったのは、先日読んだインボリューションのからみで、NTT出版のサイトをブラウズしててたまたまみつけたというものです。けっこう都心の大型書店にも行ってる方だと思うのですが、店頭で見かけた記憶はありません。こういう好著でも出会うきっかけがなく、知らぬままに絶版になってしまうものって少なくなさそうな気がしてしまいました。

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