2010年12月29日水曜日

言語のレシピ


マーク・C・ベイカー著 岩波現代文庫G247
2010年12月発行 本体1420円
日本語と英語はとても違った言葉のように感じます。しかし、動詞と直接目的語・句・節の前後関係、名詞と修飾する句との前後関係、名詞とともに前置詞・後置詞のどちらをつかって名詞句を作るか、主動詞と助動詞の前後関係などの点で、英語は主要部が先行する性質、日本語は主要部が後続する性質を持っていて、この一つのパラメータでふたつの言語の関係をきれいに説明できるのだそうです。読んでみて、目からウロコ的な感想を持ちました。本書はこんな風に、日本語、英語、モホーク語といった相互に無関係のように思える言語どうしが、いくつかのはっきりとした特徴・パラメータをつかって関連づけ・分類ができることを教えてくれます。
ヒトの言語を作り出すレシピにはいくつかのパラメータを選択する余地があり、塩を入れるかどうか、イーストを入れるかどうかといったパラメータを選択してできあがった各言語はとても違ったもののようにみえます。それでも同じレシピからできている、これが重要。とても違ったように感じられる各言語をそれぞれの土地の子供がたやすく習得できるのは、ヒトには生まれつき言語を習得する能力が備わっているから。逆に言えば、ヒトの言語はヒトに生来備わった機構・レシピからつくりだされたものと考えられるわけです。そして、ヒトには生まれながらにしてその大まかなレシピが身についているので、周囲のつかう言葉を耳にして各言語を特徴づけるパラメータに気づくことができれば、その言語を習得できることになります。そういったパラメータが存在することのエビデンスとして、各々の言語を特徴付けるパラメータを実際に子供が選択して身につけて行く過程から実証する研究も説明されているので、私は本書の内容、レシピが存在するという考え方を信じることにしました。
言語学ってどんなことをしている学問なのか、ほとんど知らなかったのですが、 生成文法ってこういうことだったんですね。とても分かりやすい入門書でした。特に、地球上の言語の中でそれぞれ40%ほどをしめる主要部先行言語と主要部後続言語の代表として、英語と日本語が例として説明されていることが多く、その点で日本人の読者は本書を読みやすく、理解しやすくて得な感じです。とにかく、とても面白かったので、これからこの分野の本を探してもっと読んでみたくなりました。

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