2008年6月7日土曜日

蘇我氏の古代史

武光誠著 平凡社新書421
税込み798円 2008年5月発行

古墳時代や飛鳥時代は、ちっとも見通しがきかない印象です。 大王の一族の中の親類同士が争ったり殺し合ったり、名前が覚えにくいのもとっつきにくい原因でしょう。 大王の一族の争いや暗殺など、政権交代が平穏に行われない権力の未熟な時期という点では、将軍の暗殺や有力御家人の争いの続いた鎌倉時代の幕府に似ているのかなとも感じます。

また、後の時代の史書編纂者にとってあまり愉快でない話は、日本書紀につじつまのあった説明がないことが多く、おかげで作家なども含めていろいろと自由な解釈の余地のある時代でもあります。この本は、そういった見通しの悪さを、蘇我氏をはじめとした豪族内の個人間の疎遠や、大王にも嫡系の大王とそうでない大王がいて軽重があった(たとえば、敏達天皇は嫡系の大王で、聖徳太子の父の用明天皇は傍系の大王とのこと)ということなどで、説明しようとしてくれています。

この手の古代史の本は玉石混交だと思うのですが、この本の示す解釈はどんなものか、私自身の知識の欠如からその正当性については評価できません。でも、「新羅が日本に接近して贈物をさし出したときには、朝廷は高麗や百済に、新羅と仲良くするようにさとした」などの記述を眼にすると、この本だいじょぶなのかなと感じてしまいます。

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