2011年7月22日金曜日

機動戦士ガンダム THE ORIGIN

10年ほど前にガンダムエースが創刊されました。創刊号は今と違ってかなり薄い雑誌で、The Originを掲載するためだけに創られたような印象を受けました。その後はいろいろな作品が載せられるようになり、中には興味をもって読んだもの(デベロッパーズとかトニーたけざきのガンダム漫画とか)もないわけではなかったのですが、ガンダムエースは個人的にはThe Originを読むための雑誌であり続けました。そのThe Originが先月26日発売の8月号で最終回になりました。
オリジナルのTVアニメの機動戦士ガンダムは、放映回数に縛られたためだと思うのですが、キャリフォルニアに降下したホワイトベースが苦労して地球を一周しジャブローに辿り着くという設定でした。The Originでは、キャリフォルニアから南下してペルー辺りを通過してジャブローに向かい、地球一周の冗長さを避けるように変更されていました。こういった工夫にともなって割愛されてしまったエピソードもありますが、オリジナルのTVアニメ機動戦士ガンダムの物語の骨子にあたる部分は削られず、というよりそれをThe Originが活かして描いています。ただ、そのために「長い」という印象を与えることになったことは否めません。
The Originの中で特に好きだったのは、
  • 幼いキャスバルとキシリアとの会談という名の対決。
  • ダイクン支持者の中でもランバ・ラルのお父さんのジンバ・ラルとデギン・ザビやザビ家の面々は対立していたことなど、サイド3の政界模様。
  • ダイクンの妻は醜く悪妻として描かれ、ダイクンの死後(暗殺後)、 ダイクンとの間にキャスバル(シャア)とアルティシア(セイラ)の2人の子をもうけたセイラの母親を幽閉する。
  • キャスバルとアルティシアをサイド3から逃す手助けをラル派がして、特にガンタンクに乗り込んだハモンが颯爽と活躍と、そのガンタンクで闘争を邪魔する連邦のガンタンクを撃破したキャスバル。
  • キャスバル兄妹のテキサスコロニーでのつかの間の平和な暮らしと、キャスバルと瓜二つのシャア・アズナブールとの出会い。
  • テキサスコロニーを出ようとしたキャスバルの暗殺を命じたキシリアだが、シャア・アズナブールがキャスバルと取り違えられて暗殺されてしまい、シャアが志望していたジオン公国の士官学校にキャスバルが替わって入校する。
  • ガルマと同級生になったシャアが、学外での重装行軍訓練などを通して御学友ではなくガルマの友人になる。
  • ミノフスキー博士の噛んだMS開発計画。
  • 連邦の天文台の不手際で事前の予告なく、サイド3の農業コロニーに小天体が衝突し、独立への気運が盛り上がる。
  • 連邦の治安出動を予期して阻止に動いた士官学校の学生たちの責任をとって除隊したシャアが、MSのプロトタイプのような建設機械モビルワーカーの上手なオペレーターとしてジャブロー建設工事で働く。
  • ザク5機を従えてサイド7へ潜入するシャアの描写とその背後にある緊張感。
  • ホワイトベースから降りた後、実はクレーター湖になってしまっていたことを知らずに故郷のセントアンジュに行こうと歩くサイド7からの避難民の母子に、脱出用カプセルを提供したルッグンのクルー。

こうやって想い返してみると、オリジナルのTVアニメ機動戦士ガンダムのストーリーに縛られずに描くことのできたシャア・セイラ編と開戦編の良さがあらためて確認できます。年を取ったせいなのでしょうが、むかしは好きだったマーラーの交響曲を聞く気力というか体力というか意欲というかがなくなった感じ。それと同じように、The Originは全体を通して読むには重すぎて億劫な感じです。でも、こういう作者自身が作り出した個々のエピソードはとても素敵ですし、隙間を埋めるようなストーリーはいいんですよね。

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