岩波新書(新赤版)1371
2012年6月20日 第1刷発行
改革開放路線下の中華人民共和国の政治体制を開発独裁と位置づけ、その制度、中国共産党と政府の関係、中国流の「民主化」をめざした政治改革などについて概説してくれている本でした。中国を開発独裁とする本書の捉え方に私も賛成です。文革後の中国の指導者がこの路線を選択したことは賢明でした。中国がこの路線によって安定した政治と成長する経済を両立させることに成功したおかげで、日本も対中投資や貿易などの利益はもちろんのこと、北朝鮮や一時のソ連・ロシアのような不安定な大きな隣国と付き合わずに済む恩恵を享受できたのだと思います。
今後の中国は、経済成長に伴う中間層の増加、インターネットの普及による情報統制の困難などからさらなる民主化を進める必要に迫られてくるのだと思います。中国在住の民主化を求める人々には申し訳ありませんが、対岸に住む日本人の私としては、激変ではなく軟着陸を果たしてくれることの方が望ましい未来だと感じてしまいます。政府の力が強くて企業にも恣意的な規制を行えるような段階でしょうから、経済的な力を持つ層と政治力をもつ層が完全に一体化して権力を握って離さないような状況になってもらっても困りますが。
本書の内容とは直接関連しませんが、読みながら疑問に感じたこと。
- 中国の指導者はどうやって選抜されるのか、何を目的に共産党に入党して指導者を目指すのか、いまでもマルクス主義が教えられているようですが社会主義についてどんな感想を持った人々なのか?太子党なんて揶揄する人もいますが、鳩山、麻生、福田、小泉と近年の日本の首相だって太子党です。親の地位・資産・教育程度と子のそれとが相関しているのは、先進国でもそうですよね。
- いまでも政治協商会議とか、民主諸党派ってあるんですね。民主諸党派の人というのは、やはり共産党からの指令でお仕事として民主諸党派に所属して活動しているんでしょうか?
- 中国の指導者は、資源問題、地球温暖化、また一人っ子政策を続けたことによる近い将来の急速な高齢化についてはどう考えているのでしょう。これらが原因で順調な経済成長が望めなくなったりすると、国内に都市と農村の大きな貧富の格差を抱えることが火だねとなりそうで怖ろしい。
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