2007年10月17日水曜日

戦後日本の技術形成

 中岡哲朗編著 日本経済評論社 本体3200円 2002年2月発行

昨年、日本近代技術の形成(朝日選書)を読んでから、中岡哲朗さんの関わった本をたどっています。今年夏に出版された日本産業技術史事典(思文閣出版)も少しずつ項目を追って読んでいるのですが、その中のレファレンスにこの戦後日本の技術形成が出ていて、面白そうなので購入しました。

模倣か創造か、というサブタイトルがつけられていて、炭素繊維・液晶ディスプレイなど5つの事例(と、反面教師としてか戦中のレーダーの事例)についてまとめられています。高度成長期には外国の技術を導入して発展した企業が多々あると思いますが、ここでとりあげられているのは、どれも日本の企業が新しい対象に取り組んでその努力が実を結んだケースです。ただし、プロジェクトX的な扱いとはひと味もふた味も違います。必ずしも、辛抱する木に花が咲くとは限らないのです。

未来から振り返っている身の自分としてはついつい見落としがちな点ですが、研究開発はあらかじめ設定された目標への到達競争ではない、同一の効用を実現する方法には複数の選択肢がありそのどれが勝つかということは結果としてしかわからない、事前に予測できなかった事態が進路を左右することがある開発にかかる時間の不確実性、商品化に際しての市場の不確実性など、研究開発に内在する不確実性に関する指摘には納得させられました。

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