齋木伸生著 イカロス出版 税込み2800円 2007年8月発行
ソ連との冬戦争でのフィンランドの健闘には以前から興味があり、読んでみました。グスタフ・アドルフのスウェーデン軍にフィンランド人の部隊があった話から、日露戦争・第一次世界大戦でのマンネルヘイムの活躍、ロシア革命・フィンランド独立時の内戦、そして冬戦争・第二次世界大戦、大戦後といった流れが簡潔にわかりやすく記載してあります。また、ミリタリー選書と銘打ったシリーズの一冊であるだけに、軍艦・戦闘機から軍服・水筒にいたるまでのフィンランド軍の装備や階級章・博物館などについて幅広く記載があります。
フィンランド軍が冬戦争でのソ連からの鹵獲兵器を使用していたことは知っていましたが、継続戦争中にはフランス・ソ連からドイツが鹵獲した兵器を購入までして使用していたとの記載があり、自国ですべての兵器を製造できない点を補う工夫に感心しました。
冬戦争ではマンネルヘイム線を突破された時点で、冷静に譲歩してソ連と講和し独立が保てました。また、継続戦争ではドイツと組んでソ連と戦い、その後ドイツの戦況が悪化するとソ連と講和してドイツと戦うことになった訳ですが、同様の経過をたどったイタリアとは対照的に、このラップランド戦争では傀儡国家がつくられることもなく、戦闘を国土の北辺にうまく限局させています。また、戦後にはフィンランド化などと揶揄されることはあったものの、東欧諸国などとはレベルの違う独立が保たれました。この難局の連続した時代に、状況を冷静に洞察して国の行く道を誤らせなかったマンネルヘイムという人の能力には、感銘を覚えます。
ふりかえって我が祖国はどうか。ロシア・中国・韓国との領土問題や北朝鮮との拉致問題での対応をみると、政治家のレベルの違いなのか、マスコミ・国民の問題なのか。暗澹とさせられます。
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