橋川文三編著 ちくま学芸文庫
本体1500円 2007年11月発行
気軽に読める、文庫版の日本の百年。日露戦争から、明治天皇の死去までをあつかった第四巻です。この巻のほぼ半分を日露戦争が占めています。
第一巻の明治維新から読み続けてきて、この巻の前半の日露戦争が一つのクライマックスとなるように編集されています。旅順戦・奉天会戦・日本海海戦などの有名なエピソードに加えて、庶民の残したいろいろな記録からも、この当時の日本人のある種高揚した様子が伝わってきます。
このシリーズは、述べるべきことをすべて述べる教科書のようなスタイルではなくて、エピソードを選んで記述するやり方を取っていますが、日露戦争勝利後は明治国家の秋と題されて、鉄道国有化、韓国の保護国化、中国革命、「地方改良運動」、大逆事件などが取り上げられています。
地方改良運動は、本来なら社会政策と呼ばれるべきものが、社会という言葉がはばかられた時代であったがゆえに、こう称されたものだそうです。こういう風潮は、社会省でなくて厚生労働省などという呼びにくい名称をつける現在だけのことではないのですね。
内務省の中にも、社会政策を必要と考える官僚が現れてきた反面、政府は大逆事件をフレームアップして、社会主義が広まることを押さえようとしていたのでした、という流れ。
ただ、「私はこれまでの大逆事件を取り扱った諸論説が、あまりにもデッチあげと無辜の罪を強調するのに止まっているのに、あきたらず思っていたのです。それは当時の私たちがそういう厳罰を受ける覚悟で言動していたことを思うからです。」と、当時から反権力的な生き方を貫いてきた方の回想があるのに、少しびっくりしました。ロシアでのアレクサンドル2世暗殺などを見て、当時のアナーキスト達は行動する覚悟をもっていたとおっしゃっているのですね。
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