私の場合にはあまり大した影響を与えないしもやけですが、かなりひどくなる人もいます。足だとくるぶし以下全部、手も手指に加えて手背・手掌全体が腫脹して、手が使いにくくなったり、靴が履きにくくなったりします。
また、腫脹した部分に傷がつくと治りにくく、びらんから潰瘍を形成して、治療に難渋することもあります。種々手を尽くしても、暖かくならないと治らないわけです。また、暖かくなっても元通りにならずに、手足に色素沈着を残す人もいますね。
こんな風にいろいろと問題のあるしもやけですが、皮膚科の医師は別として、その他の科の医師の間での関心はかなり低い方の疾患だと思われます。しもやけという名前を聞いたことがない人はいないと思いますが、医学生用の教科書に写真の図版が載せられていることはまずないでしょう。
ですから、しもやけになった経験のない医師は、患者さんの手足を見ても見当がつかないのだろうと思います。じっさい、内科や整形外科にかかって、蜂窩織炎や閉塞性動脈硬化症など別の疾患の診断を受けてしまった患者さんも少なくありません。
しもやけの治療ですが、「今日の治療指針」などの本には、ビタミンE軟膏(ユベラ軟膏)などがすすめられています。ただ、実際にこれが効くかというとかなり疑問です。漢方では、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(ATOK医学辞書のおかげで、これも一発変換)などをつかうようですが、服用した患者さんたちのお話では著効ということはなさそうです。また、私自身は中国人の医師から勧められて烏骨鶏の血液を粉末にしたカプセルを一シーズン服用したことがありますが、自覚的には効果なかったですね。
私が処方してみて唯一手応えのあったのがニフェジピン(nifedipine)です。ニフェジピンはカルシウム拮抗薬と呼ばれ、血管拡張作用のある高血圧の治療薬(商品名アダラートL、アダラートCR)です。潰瘍化して困り果てた症例に、血圧も高かったので、文献をもとにニフェジピンを開始したところ、腫脹が軽減した経験があります。
しもやけは皮膚の最小動静脈の寒さによる収縮拡張機能の異常が原因のようですから、ニフェジピンが効くのかもしれません。また、ACE阻害薬やアンギオテンシン受容体拮抗薬なども、腎保護作用と同じような機序で効いたりするのではとも妄想してしまいます。
ニフェジピンも10年ほど前にはanecdotalな治療法だったのですが、その後controlled study実施されています。あまりもうけにはならない分野だろうし、また季節性やその年の寒さなどにも影響されるので治験を組むのが難しかったりの問題はあるでしょうが、もっと有効な治療法開発に、製薬企業の努力を期待したいものですね。
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