医学部の5年生の時に病院実習がありました。いろいろな診療科をローテートして実務を見学したり、患者さんの疾患や病歴・診察所見などをまとめてレポートしたりなどが主な内容だったと思います。
血液内科をローテートした時に急性リンパ性白血病の患者さんを担当してレポートすることになりました。五つくらい年上の女性でしたが、化学療法の影響で頭髪がうぶ毛だけになっていて、いつもキャップをかぶっていた方でした。レポートを課せられた医学生だったので、これまでの病気の経過、病気に対する受け止め方、症状や検査・治療に対する感想などなどを彼女に聞かせてもらいました。
彼女以外の患者さんも含めて、いろいろの科で多くの患者さんを煩わせましたが、大病で入院しているうえに、学生の相手までするのはなかなかに大変なことだったろうと思います。でも、大学病院に入院しているからか、みなさん丁寧に接してくれた方ばかりで、今思い出しても感謝です。
で、血液内科の患者さんですが、何度かお話を伺ううちには雑談も混じることもありました。彼女は入院が長くなり退屈なので何か面白いマンガでもというリクエストがあり、いくつか手持ちのマンガを持参して読んでもらいました。その中には吉田秋生の BANANA FISH もあったのです。
BANANA FISHは当時読んでいたマンガの中で一番面白いと感じていたもので、彼女も読んだ後に面白いと言ってくれました。でもそのあとに、予想外の感想が。「BANANA FISHが完結するまで生きていられるかな」と。
その頃のBANANA FISHは別冊少女コミックで絶賛連載中で、7か8巻くらいまで出ていたでしょうか。かなり長い作品なので、後半はだれた感がなくもないのですが、ストリートギャングの戦いが主だったこの頃までは本当に引き込まれちゃうような出来でした。
私は単行本化されてから買っていた(さすがに別コミを毎月買ったりはしませんでした)ので、年に2-3回の発行が待ち遠しかったことを覚えていますが、彼女にとっては数ヶ月先が定かではなかったのです。実際、翌年に彼女はお亡くなりになり、BANANA FISHの完結を見る機会はありませんでした。
完結していないコミックスを持ち込んだ私も馬鹿でしたが、それまでそういう発想が全くなかった訳で、教えられた感がとても強いエピソードでした。自分にあてはめてみると、コミックスの完結はさておいて、生きているうちにあと何冊の本を読めるかな、もう一生に読む本のうちの半分くらいは読んじゃったかなと思い始めるようになったのもこれがきっかけです。
医学部では、解剖実習をしたりなど死と関連した事象と出会うことが他にもあったはずですが、私にとって死を自分に引き寄せて考えさせてくれたのは彼女の言葉でした。
3 件のコメント:
BANANA FISHにはそんな思い出があったのですね
ぼくは単純にあのどきどきするスリリングな展開が好きでした
また連載中にどんどん進化していく絵も好きでした
最近また読みたくなって探していますが
さすがに見当たりません
一時期マンガのリバイバルブームのときに小さめの本で全巻再度発売しているときに買っちゃえば良かったなと後悔しています
あとどれくらい持つのだろうか
それは痛切に感じますね
最近やけに
昔読んだ本がなつかしくなるのは
回帰願望なのでしょうか
そんな中でBANANA FISHは
とりわけ大きな存在で
やはり影響力が大だったのだなと
思います
ちなみにわたしは
別マと別コミは
愛読書でしたよ
黄色いカバーのコミックスは全巻持っているので、よければお貸ししますよ
ありがとうございます
まだ
本やさんに聞いたわけでもないので
すこし探してもなかったら
お願いします
というかもしかしたら
実家に残っているかもしれないのですが
もう読める状態じゃないかな?
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