2008年7月30日水曜日

宇宙の定数


ジョン・D・バロウ著 青土社
2005年3月発行 本体2800円


人間原理は、光速度やプランク定数などの物理の定数がなぜ今の値になっているのかを、炭素型の生物である人間が観測者として存在しうる宇宙になるには、そういった値でないと困るという点から説明してくれるものです。

人のような知性のある炭素型生物ができるには、ビッグバン後に星ができて、超新星爆発して超新星内で作られた重い元素がばらまかれ、それを元にしてまた星ができて惑星ができて、生命が発生して知性を持つまでに進化しなければならないので、ビッグバン後百数十億年経過しないとだめ。また、その間ずっと膨張を続けた宇宙はとても大きくなっている。また、原子が安定して存在できたり、複数の原子からなる化合物が安定して存在できたりなどの条件を満たすには、自ずと自然定数のとれる範囲が決まってくるわけですから、人間原理自体は、しごく当たり前の主張だと感じます。

また、本書の中では無次元の数である微細構造定数αが、過去からずっと一定だったのかということも論じられていました。
  α=e2/hc4πε で、
  eは素電荷、hはプランク定数、cは光速、εは真空の誘電率、
  1/α=137.036
西アフリカのガボンにあるオクロのウラン鉱山で20億年前に起きた天然原子炉現象など、さまざまな証拠からαは過去からずっと一定だったと考えられてきました。ただ、最近著者のグループが、αのごくわずかに変化した可能性を発見したのだそうです。αが変化するってほんとかな。

私たちの住む宇宙が空間3次元と時間1次元からなることも、人間原理から説明できるのだそうで、これは初耳。重力の逆二乗則や電磁気の逆二乗則空間が成りたつのは3次元の世界だけで、4次元だと逆三乗則になるので、惑星が恒星のまわりを安定して運動したり、安定して原子が存在できなくなっちゃうのだそうです。4次元以上の世界に人間は住めないというわけですね。

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