2008年8月17日日曜日
思想地図 vol.1 特集・日本
東浩紀・北田暁大編 NHKブックス別巻
2008年4月発行 本体1500円
NHKブックスの一冊ではあるのですが、中で編者も書いている通り、中身は雑誌風味です。特集・日本と銘打たれているように、ナショナリズム・日本論・共和主義などに関するシンポジウム・論考とともに、現在の日本文化の代表である、マンガ・アニメ・初音ミク現象などに関する論考も載せられています。
一番おもしろかったのは、「日韓のナショナリズムとラディカリズムの交錯」です。民族主義という言葉に対する感覚が、南北の分裂という問題を抱える韓国と日本とでは異なる点の指摘は鋭いですね。あと、韓国では金大中・盧武鉉という進歩派の指示する大統領が実現し、しかもそれが金融危機後のIMF管理下だったので、経済的には厳しい政策をとらなければならなかった点が、基本的には自民党の政権が続いている日本とは大きく違います。盧武鉉政権の実現に寄与した三八六世代が、その下の世代からは既得権をもつ世代として批判されるというのも、興味深い指摘です。
共和主義に関しては、視点のことなった二人の論考が載せられていますが、切れ味は今ひとつ。シンポジウムや対談の記録は、分かりやすく読めるので歓迎。また、評論ってとりあげられている対象をよくは知らなくても何となく読めてしまう物ですが、巻末に載せられて編者に絶賛されている「キャラクターが、見ている」という公募論文は、「エヴァンゲリオン」「あずまんが大王」「らき☆すた」などなどを知らないので、理解困難で残念でした。
雑誌を単行本の形で売る試みはありかもしれませんね。少なくともこの内容の雑誌が創刊されたとして、その創刊号を私が買うかというと、おそらく手に取ることもないような気がするので、そういう点では成功した企画なのだと思います。
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