2007年12月5日水曜日

鉄道レールの銘

先日の午後、駅で電車を待っていた時にたまたまレールに目をやると、冬場で太陽の高度が低いためレール側面に日光があたっていて、NKKという文字が読めたことがありました。また、自宅近くの踏切のレールにも写真のような記号と文字がありました。


ウィキペディア(Wikipedia)でレールについて調べてみると軌条という項目にいろいろ説明がありますが、ここには側面の銘についての記載がありません。そこで、外部リンクとして紹介されている、現役の鉄道用レールを見るに行ってみると、この写真のレールは新日本製鐵八幡製鉄所、2005年11月製造の在来線用1メートルあたり50kg規格のレールなのが分かります。また、日本で現在レールを製造しているのは新日鐵とJFEグループ(日本鋼管と川崎製鉄)の2社だけだそうなので、NKKはやはり日本鋼管製ということですね。

このサイトはフィールドワークを元にした労作で、レールに関する情報量満載でした。例えば、過去に日本で使われてきた鉄道用レールの製造業者

明治の日本は鉄道建設の際に、レールを欧米各国から大量に輸入していました。このサイトのオーナーは日本全国を行脚して、古い輸入レールで現存している物を調査して、その写真や製造会社の沿革などをまとめています。

その中には Barrow Hematite Steelなどイギリスの製鉄会社の名前がいくつも挙げられていました。以前、イギリス鉄鋼業の歴史・盛衰についての本を読んだことがありますが、こういうところでお目にかかれるとは思ってもみませんでした。

また、どの鉄道会社がどこの国のどの製鉄会社のレールを使って建設を進めたのかは、鉄道会社の役員や輸入に携わった商社との関連などの分析につながることも想定される材料で興味あるところ。しかし、文献資料をあさっても今ではどこ製のレールを使ったのか分からなくなってしまっているところが多いだろうと想像されます。その点、現存するレールの調査という手法は、文献史学に対する考古学的な、堅実なやり方です。

10年以上前までは、こういう労作の発表の場は鉄道趣味か産業史・産業考古学の学会・雑誌などくらいしかなかったのではないでしょうか。そして、そういう雑誌を私が目にする機会もきっとなかったはずだと思います。それが現在では、自宅にいながらにして(iPod Touchを持っていれば、レールを目の前にして)アクセスできる訳で、wwwの有り難みを感じるばかりです。

それにしても、レールに製造社銘を入れるのはどうしてなんでしょうか。レールは一般の人の目にも触れる存在なのでたまたま私が気付いただけで、実は工業・建設業の材料として使われる厚板や鋼管にも銘が入っているものなのかもですが。

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