2007年12月24日月曜日

旧事諮問録(上)

旧事諮問会編  岩波文庫  本体760円  1986年1月発行

旧幕時代の制度の実情が忘れ去られてしまうことを危惧した史学会会員の有志が、明治24年に旧幕府の役人を招いて10回にわたって行った聞き取りの記録。本文庫では上下2巻に分けられて収録され、上巻には、小姓・勘定所・評定所・大奥・目付などの職についていた人たちとの質疑が載せられている。

今回購入したのは、岩波文庫2007年秋の一括重版として販売されていたもの。これまで、「くじしもんろく」と読むのだとばかり思っていたが、「きゅうじしもんろく」が正しいそうな。読んでいて興味あるエピソードは少なくないが、そのうちのいくつかを以下に紹介。

江戸幕府の終了・崩壊のことは、招かれた複数の故老が「瓦解」と呼んでいた。

勘定所勤めだった方の問答
「◎問 贈り物と賄賂との区別は如何
 ◎答 贈り物は、つまり定例の物で、いわれなく不意に持って来るというようなものではありません」とのこと。
定期的に贈られる付け届けの品、今で言えばお中元やお歳暮にあたるものは、賄賂にはあたらなかったということらしい。

評定所勤めだった方の問答
桜田門外の変の後、「悪心を以てしたのでない。国のためにならぬというところでやったんだから、やはり大石良雄が吉良を殺したのと同じ事であります。自分の方に対しては忠孝であるが、幕府に対して済まないから死を賜わるがよろしい」ということで、犯人達を死罪にするか切腹にするかで長く手間取ったとのこと。
日本人の多くはこう考えるものなのか、昭和の五・一五事件や二・二六事件への対処にも通じるものがある。

大奥の方の問答
「◎問 衣服のことについて、襦袢だの肌着などは、日をきめて着替えるのですか。洗濯するようなことはありませんか
 ◎答 御洗濯ということはございませぬ。御下りになりますのでございます」
将軍や御台所の衣類は洗濯せず、期間が過ぎると下げ渡されたらしい。和服というか着物は滅多に洗濯などしないのは分かるけれど、襦袢・肌着でも使い捨てとというか、使ったらお下げ渡しになるとは。

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