2007年11月2日金曜日

かぜ、続き

かぜにかかっても、医療機関への受診やかぜクスリは必らずしも必要ではないと昨日書きました。このことは多くの人が理解していることのようです。

高齢者の場合、もともと高血圧症などの慢性疾患で医療機関に通院している人も多く、かぜにかかったかなと思った際に受診する人が少なくありません。高齢者の方が、かぜと似た症状でもかぜ以外の重篤な疾患にかかっている可能性が高いので、これは望ましいことです。

若い人(若い人というのは高齢者でない人ということ)の場合には、かぜにかかったかなと思っても、医療機関を受診しない人の方がずっと多いのだろうと思います。仕事を休んで医療機関にかかるのは難しいので、OTCのかぜグスリで済ませたり、OTCもつかわずに症状をやり過ごす人もいるでしょう。

ヒトは年に数回かぜにかかるものなのだそうです。一カ所で何年も診療を続けていると、若い人の中にも毎年のように年に複数回かぜで受診する人たちがいることに気付きます。そういった、かぜで受診する回数の多い人には二つのタイプがあるのではと日ごろ思っています。

第一のタイプは、比較的軽い症状でもきちんと受診する人たちです。どのくらいの症状があれば医療機関を受診するかという閾値みたいなものが、各個人によってかなり異なる訳で、その閾値が低い人たちがこの第一のタイプになるわけでしょう。健康に対する意識が高い人や、健康状態が気になってしょうがない人など、そういった各個人の健康に対する考え方の指標として、かぜでの受診回数を使えるんじゃないかとも思います。

第二のタイプは、38度近く発熱するなど、比較的しっかりした症状がかぜのたびに出現して、かぜでの受診回数が多くなる人たちです。かぜ引くたびに発熱する・発熱しやすいタイプの人とも言えます。
私自身はほとんど発熱することがありません。かぜの人と接する機会はふつうのひとより多いわけですから、かぜには人並みの頻度でかかっているはずですが、37.5度以上の発熱は1997年冬以来経験していません。こんな風に、かぜで発熱しやすい人としにくい人が存在するのだと思います。

ウイルス感染であるかぜでの発熱は、感染により免疫細胞からの産生が促されるサイトカインという物質の作用によるものです。サイトカインは炎症反応を惹起して感染を排除する作用を持っていて、かぜがself-limitedであるのはこういった作用のおかげです。


ここから先は、妄想モード。
数年前から新型インフルエンザが話題になっています。新型インフルエンザウイルスが出現すると、世界的な感染・パンデミックを起こすことが予想されます。

20世紀初めの新型インフルエンザのパンデミックであるスペインかぜの際には死亡率が高かったこと、特に青壮年の死亡率が高かったことからが知られています。本来頑健なはずの青壮年に死者が多かった理由として、このインフルエンザウイルスの感染に際してはサイトカインの分泌が亢進して、サイトカインストームという免疫反応・炎症反応の暴走がおきて肺など各種臓器が傷害されたことが想定されています。

かぜ症候群のような軽度のウイルス感染に際して発熱しやすい人は、サイトカインストームをおこしやすいというようなことはあるのでしょうか?ここ数年のうちに正解が判明するのかも知れません。

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