朝晩かなり涼しくなり、かぜで受診する方が増えてきています。
かぜのことを医学の教科書ではかぜ症候群と呼びます。かぜ症候群は、主にウイルスの感染で起きる急性の上気道の炎症性疾患(*1)です。鼻汁・咽頭痛・発熱・咳などの呼吸器症状を呈しますが、基本的にはself-imited(*2)な疾患です。self-lmitedな疾患ということは、必ずしも治療には薬剤の投与を必要としないということでもあります。
「かぜ薬」というものが薬局で市販(*3)されています。かぜ症候群の原因となるウイルスに効果のある薬剤はありませんから、かぜ薬はかぜ症候群を治すクスリではありません。かぜ薬は、かぜ症候群の際に現れる鼻汁・咽頭痛・発熱・咳などの症状を軽減してくれる、対症療法のためのクスリなのです。総合感冒薬では、鼻汁を押さえる抗ヒスタミン剤・痛みを押さえたり熱を下げる解熱剤・咳を押さえる鎮咳剤などの薬効成分が配合されています。
かぜで医療機関を受診すると、医師の診察を受けてから薬剤を処方されることになります。医師はその患者さんの症状に合わせて、薬剤を選択します。例えば、咳のほとんど出ない人には鎮咳剤は不要でしょうし、発熱が軽度でそれほどつらくなければ解熱剤も不要になります。市販の総合感冒薬ではまとめて配合されているから不要な成分を取り除いて服用することができませんが、処方薬はテイラーメイドな訳です。ただし、医療機関で処方されるクスリの場合、一つの錠剤・カプセルの中に一種類の薬効成分だけが入っていることが普通なので、複数の症状を軽減するために2剤以上のクスリが処方されることが多いと思います。
かぜにかかったら、医療機関を受診すべきかどうか。かぜ症候群は上記のようにself-limitedな疾患ですから、必ずしも受診の必要はないのだと思います。ただし、かぜだと思っていたのに実は肺結核や肺炎などといった別の疾患だったりすることもありますから、症状が長引くときや症状がいつもより重いと感じた際には受診すべきでしょう。
また、かぜにクスリが必要かというと、必ずしもクスリが必要とはいえないと思います。かぜ薬は対症療法のための薬剤ですから、その症状がそれほどつらくなければクスリで押さえる必要はないのです。特に発熱や咳と言った症状は、体がかぜを治すために役に立ってもいるのですから。
*1 医師は「病気」のことを疾患と呼びます
*2 自然に治癒する傾向がある、自分の力で治るという意味
*3 市販薬のことをOTCとも呼びます。また、外来では「市販」を「しばい」と読む方がとても多いことに気付かされます
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