なぜラテンアメリカの経済史を記した本書を手に取ったかと言うと、一つは従属理論に対する興味からです。しかし、著者は従属理論に対して否定的な評価で、本書の中にも従属理論に対する言及は多くはありません。
本書では交易条件について、各種のデータを示して「1913年以前にラテンアメリカのNBTT(純商品交易条件)が長期間継続的に低下したという主張は、従って妄想に近いものであった」としています。著者の従属理論に対する否定的な評価もうなづけます。
たしかに中心と周辺の間で不等価交換が行われることが万病の元だとする考え方は、もはや通用しないのだとは思いますが。しかし、本書には言及がありませんが、従属理論に系譜を持つ世界システム論的な考え方は、ラテンアメリカについて検討するときにも、有用なツールになると私は思います。
第一局面においても、輸出だけにたよっては先進国に匹敵する経済成長を達成することが困難でした。このため、農業・手工業をあわせた非輸出部門の成長が重要なのですが、このことに関連して著者は「米国では労働力の不足に対して、労働節約的な農業技術への大規模な投資によって対応してきた (中略) ラテンアメリカの大部分では、労働力不足に対して十九世紀にはまさに植民地時代と同様の労働市場への人為的な操作、強制労働、そして土地獲得の制限によって対応したのである。西半球を二分する二つの地域が異なる対応をした理由については、ここでは論ずることができない(それは部分的には独立後の異なる政治システムに由来しているかも知れない)」と記載しています。
この「部分的には独立後の異なる政治システムに由来しているかも知れない」という部分こそ、世界システム論が説き明かすところです。
農業にしろ工業にしろ、同じ商品を生産するとしても、中心の国と周辺の国とでは資源の入手しやすさが異なるので、生産のスタイルも異なったものとなります。つまり、中心の国ではより多く機械に頼る資本集約的なスタイル、周辺の国では労働集約的なスタイルに。中心の国で機械の改良が行われてより資本集約的な生産が行われるようになると、その生産費の低下に対応して周辺の国では労働条件の切り下げで対応せざるを得なくなり、それを実現するために強制労働などのより一層の抑圧が必要になるのだと思います。
このようにA局面では、同じ商品の生産についても、時間とともに中心と周辺では必然的に生産のスタイルに次第に違いが出来てきます。また、一般的には中心の国は資本集約的な商品生産に、周辺の国はそれ以外の商品の生産に特化していくことになるのです。
しかし、B局面になって資本収益率が低下し、中心の国において資本が過剰となり、十分な利益を上げることのできる投資先が中心の中にはなくなると、資本は半周辺または周辺の国に向かうことになります。20世紀後半の東アジア諸国の経済成長はこういうことだったのではないでしょうか。
あと、本書にはこういう記述があります。
「『富裕層から搾り取る』ことを目的にした非正統派の政策は通常短期的には効果的ではあったが、長期的には非生産的であった」として、アルゼンチンのペロン政権・チリのアジェンデ政権・ニカラグアのサンディニスタ政権に対して、著者は批判的です。また著者は、「カストロ政権下におけるキューバの実験は続いているが、得たものが失ったものより大きいという確証は全くない」と。
これは、アメリカ合衆国による理不尽な経済封鎖の存在を正当化するのでなければ、キューバに対してあまりに酷な評価だと感ぜざるを得ません。アジェンデ政権に対する最初の9・11にしてもそうですが、ラテンアメリカでこれらの政権がアメリカから受ける不利益は著者の眼中にはないのか、それともこの地域の国がアメリカに楯突くようなことをすること自体そもそも無謀なことなのだとお考えなのかもしれません。
ラテンアメリカ経済史
ラテンアメリカ経済史 続きの続き
4 件のコメント:
あなたが考えているのは構造論です。あなたの文章を読んで、私の楽しかった現地での思い出が吹っ飛びましたよ。もうこういうことを書くのはやめて頂きたい。
発言の自由があるうちに改めた方が良いですよ。責任を取ることはもう始まっているのです。今躍起になって自分を追い詰めないでください。日記をノートに書いたらどうですか?孤独化はもう始まっているようですよ。あなたは自分の意見を言うのは様子がわかってからでも良いではありませんか?大学の勉強は今はさっぱりわからなくてもそれで良いんです!もっと今を生きてください。旅行に行かれてはどうですか?
知的なストレス発散をどこかでする必要があります。それと大学の授業はしっかり聞いた方が良いですよ。
私は構造論大好きです。
世の中にはブログにこういうコメントをつけてくれる人が存在するんだなってことがわかって、とても勉強になりました。
コメントありがとうございます。
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