松本三之助編著 筑摩書房 税込み1575円 2007年9月発行
1960年代に発行された「日本の百年」全8巻が、ちくま学芸文庫になって刊行されたものです。第3巻では1889年の憲法発布から日清戦争を経て1900年までが扱われています。
このシリーズの特徴は、各種の史料に語らせるスタイルをとっていることです。一次史料とは限らず回想録などからの引用も多いのですが、このスタイルのおかげで、発行から半世紀近くが経過しているにもかかわらず、読んでいてちっとも古びた感じがしません。
和辻哲郎は少年期を回想して、日清戦争前後に手織り木綿のかすりの着物からガス糸織りの着物になり村の紺屋がなくなったことをあげて、明治維新よりも日清戦争前後の産業革命の方が実際に村の姿を変えていったと述べています。
津田左右吉は、この時代の故郷東栃井(名古屋の北郊)のことを、養蚕がさかんになって近所の家の家造りがだんだんりっぱになってきたのが目についた、と回想しています。
私は日本史をこれから学ぼうとするような年齢ではないし、近代日本の歩みは一通り頭に入っているつもりです。なので、各年に何があったというスタイルで記載された教科書のような本なら敬遠してしまいす。でもこういったエピソードは初めて知ったことも多いし、読んでて面白く感じます。和辻さんの哲学書には全く興味ありませんが、この自叙伝の方は入手できれば読んでみたいくらいです。
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