2008年1月3日木曜日

明治国家を作る 地方経営と首都計画


御厨貴著  藤原書店  本体9500円  2007年10月発行

本書は、1980年刊の「明治国家形成と地方経営」と1984年刊の「首都計画の政治」という、今では絶版になっている著者の2冊の著書を併せて新たに発行されたものなのだそうです。私は、その絶版になっている2冊を読んだことがないので、購入してみました。

第一部では、1880年代という議会開設の準備期を対象として内閣制度・官僚制度の形成されていく過程が、政治家同士の関係などに焦点を当ててつぶさに、とても読みやすく解き明かされています。正直、私には個々の内容をここで論評する能力はなく、ただただ楽しく勉強ができたって感じです。また第二部では、首都東京の都市計画をテーマに、各省・政治家・官僚・ジャーナリズムなどの対抗関係がやはり、分かりやすく説き明かされています。

同じ時期を対象にしている本でも、例えば 日本の百年2 わき立つ民論 1877-1889を読んでいると、政府は一枚岩としてしか見えてきません。しかし、政治史の専門書である本書では、藩閥の政治家一人一人が違った考え方・政治手法を持っていたことが非常に説得的です。

もちろん、歴史書にはそれぞれの性格によって、叙述の細かさの程度の違いがあるのは当たり前で、日本の百年シリーズも面白いから好きですし、どちらが良い悪いというものではありませんが。

また本書では、政治家達の書翰と書類、会議体議事録、ジャーナリズム報道をも併用しつつ、当時の政治家・官僚・議員らの発言が一貫したストーリーの下に組み合わされ、読んでいてとても面白い感想を持ちました。政治史の本というのは微に入り際にいると、こうなってゆくものなのかしら。

序で、「読んで楽しい物語までにあと一歩」と著者は書いているのですが、どうしてどうして、これにもう少し想像をふくらませた発言や状況を加えれば、優れた歴史小説としても立派に通用する作品だと思います。これ、褒め言葉です。

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