2008年1月20日日曜日
日本産業技術史事典
日本産業技術史学会編 思文閣出版 本体12000円 2007年7月発行
この事典は、日本産業技術史学会設立20周年の記念事業として発行されたものだそうです。技術史にも興味があるので、出版広告を見ていくつか本屋さんをみたのですが見つけられず、思文閣出版さんのサイトから直接オーダーして入手しました。ちと厚めの本なので積ん読になっていましたが、冬休みに読んでみました。
知らなかったことも多く記載されていて、面白く読めました。例えば、カニ缶のカニを包んでいる硫酸紙、あれって不思議ですよね。タラバガニの肉が缶の内面と接触すると黒くなってしまうので、それを防止するためのものなんですって。
でも、本書の読みどころは、機械、素材(木と石と土)、産銅業、石炭産業などの章です。特に素材(鉄)の章は、とても読み応えがありました。生産の技術に加えて、鉄鉱石の品位や鉄鉱石に含有されているリンやイオウの量など原料の影響も大きかったようです。戦前の日本製銑鉄には競争力が乏しかったこと、それなのに戦後の日本鉄鋼業が強くなった理由の一端が理解できた気がします。
「読む事典」を謳ってはいるのですが、いろいろな分野の産業の歴史について網羅的に扱われているので、B4版・544ページもの本事典でも個々の項目はスペースが足りなめで、記述が少し簡単すぎると感じられる章も少なくありませんでした。
ページが足りない感じなのは、構想・編集にも問題があるのではと感じます。例えば、31-58ページの道具・生活技術に関する章などは、全くつまらない。「産業技術」史事典なのだから、こんな章は省いた方がいいです。
また、執筆者が多数にわたる関係で、同じ内容が違う項目で重複して述べられているところが見受けられます。学会編なので、編集者が読んでだめ出し・すりあわせしにくいのかな。でも高価な本なので、もっと良いものを期待してしまいます。
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